1. 足元の石に気づいたこと、ありますか?
諏訪神社を歩いたことのある人なら、
あの長い階段や鳥居を覚えているかもしれません。
でも、その途中。
石畳にひっそり埋め込まれた“祈りのしるし”に、気づいたことはありますか?

この丸い石ってなんか意味深。
今回のナガサキハテナは、
男石・女石・両性合体石──
3つの石をたどりながら、“踏んで祈る”という巡礼のかたちを歩いてみました。
2. 他の神社にもあるの? 陰陽石というもの
全国の神社には、「男石」「女石」と呼ばれる石がいくつか存在します。
でも──
石畳の足元に埋め込まれ、しかも“踏むことで祈る”形式は、
長崎・諏訪神社のとても珍しい信仰のかたち。
この3つの石を順番に踏むことで、
陰と陽のバランスを整えながら、祈りを深めていく。
知らずに通り過ぎてしまう場所にも、
見えない導線が用意されていたことに、私は静かに驚きました。
3. 男石 ― 2番目の鳥居の足元にある、まあるい石
2番目の鳥居の前、足元にまあるい石が埋まっています。
それが「男石」。
不自然なくらい、きれいな丸。
「どこから、こんな石を?」「誰が? いつから?」
調べても、はっきりした記録は見つかりません。
でもこの石は、**“女性が踏むことで良縁や子宝のご利益がある”**とされています。
私も最初は気づかずに踏んでいました。
でも知ってからは、その一歩一歩に気持ちが宿るようになりました。
踏むことで、祈る。
その行為そのものが、整えになっているような気がしています。
4. 女石 ― 4番目の鳥居、形の読めない石の前で
4番目の鳥居の足元。
中央に細長い石と、まわりに並ぶ大小の石。
この石は「女石」と呼ばれていて、男性が踏むことで家庭運や良縁を願う石とされています。
舟のようだと言われることもあるけれど、
正直、私にはそうは見えませんでした。
けれど、誰かがここに「意味がある」と思ってこの石を据えたこと、
それがずっと残ってきたことには、やっぱり何か“整い”のようなものがあるのかもしれません。
5. 両性合体石 ― 拝殿前、祈りがひとつになる場所
拝殿前、石畳の中心。
丸の中に斜めのひし形がはめ込まれたような模様の石があります。
それが「両性合体石(りょうせいがったいせき)」。
名前だけ見るとちょっとドキッとするかもしれませんが、
これは性的な意味ではなく、陰(女性)と陽(男性)が調和し、
神さまの前で“祈りが整う”ことを表す石なんです。
男石と女石を経て、最後にここで祈る。
それはただの順番ではなく、気持ちが整っていく動作の流れなんだと思います。
☯️ 陰と陽 ― 整うということ
陰(いん)と陽(よう)。
ふたつでひとつ。
相反するものだけれど、どちらも欠けてはいけない存在です。
- 陰:静けさ、内側、受け入れる力、夜、女性性
- 陽:動き、外へ、発する力、昼、男性性
女石=陰、男石=陽。
そして両性合体石は、それがひとつに整う場所。
整えるというのは、どちらかを消すことでも、強くすることでもなく、
それぞれが、それぞれの場所にちゃんとあるということ。
諏訪神社の石たちは、そんな見えないバランスを
足元からそっと教えてくれている気がします。
6. 石を踏む、祈りの順番
諏訪神社の石たちは、順番に踏むことで祈りの流れが整っていくとされています。
- 女性は、男石(陽)→ 両性合体石
- 男性は、女石(陰)→ 両性合体石
この動作は、信仰というより“所作”。
自然と気持ちが神さまの方へ向いていくような、そんな小さな流れ。
公式でもこう語られています:
「男石と女石が、幾何学的な紋様で埋め込まれており、
男性は女石、女性は男石を踏んだ後、拝殿前の両性が合体した石を踏んで参拝すると、
縁結びの願い事が叶うと言われています。
江戸時代にこんなロマンチックなことを考えたとは驚きです。」
7. おわりに ― 石は語らないけれど、足元で祈りを受け止めていた
石たちは、何も語らない。
だけどそこに、
ずっと誰かの願いが重ねられてきたことだけは、感じられる。
願いがすぐ叶うわけじゃない。
でも、「気づいて、踏んだ」その一歩に、
心の向きが神さまの方を向いていたことだけは、確かだった。
これからも私は、お諏訪さんを歩くたび、
この石の上を通るだろう。
そしてそのたび、
「いま、自分の中の陰と陽は整っているかな?」と
そっとたしかめながら、また一歩を踏み出すのだと思います。
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